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ペリクリーズ:シェイクスピアのロマンス劇


「ペリクリーズ」は、今日ロマンス劇に分類されるシェイクスピア晩年の四作品のうち最初のものである。ロマンス劇とはなにか、その定義については別稿にゆずるとして、この作品はシェイクスピアの劇の中でも、上演史上もっとも人気のあるものだった。筋立てや演出が、ファンタスティックな要素に富み、エンタテイメントとして魅力があったからだ。その娯楽性こそ、ロマンス劇の本質であるのかもしれない。

この劇は主人公ペリクリーズの遍歴の物語である。その遍歴は、オデッセイの遍歴を思わせる。オデッセイ同様ペリクリーズも、船が難破して辛酸をなめる。そして愛する妻を失い、妻の忘れ形見たる一人娘マリーナの養育をペンタポリスの王シモニデスにゆだねる。だが成長したマリーナのあまりにも優れた性質に嫉妬したシモニデスの妻によって、殺害されようとする。マリーナはあやうく殺害を逃れるが、彼女には別の辛酸が待ち構えているのだ。

このように、劇のほとんどは、ペリクリーズを巡る運命のいたずらを描いている点で、悲劇的な色彩を帯びた叙事詩と云った風格をもっている。コーラスが出てきて物語の進行を補足するところは、ギリシャ悲劇の装置を思わせるが、この劇の場合には、コーラスはあくまでも、劇の進行役であるという点で、ヘンリー5世のコーラスと通じるところがある。

しかし、劇の最後に至って、復活と再生が語られる。ペリクリーズは船で遍歴しているうちに、たまたまミュティレネの沖に停泊するのだが、そこで船に乗り込んできたマリーナと感動的な再会を果たすのだ。

マリーナの話を聞いたペリクリーズは、シモニデスへの復讐を誓うが、その前にダイアナが現れて、エフェソスの神殿に行けと告げる。そこで父娘連れだってエフェソスのダイアナ神殿にいったところ、そこには死んだと思っていた妻のセーザが巫女として仕えていたのであった。

こうして父と母と娘が、十数年ぶりに涙の再開を果たす。ペリクリーズは改めてセーザと結ばれ、娘のマリーナはミュティレネの太守ライシマコスと結ばれる。そんなところからこの劇は当初、喜劇に分類されていたわけなのである。





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